花言葉とは、花に託された象徴的な意味やメッセージのことです。
ロマンチックなものから、時には少し意外なものまで、花言葉は古くから人々の間でコミュニケーションの手段として、また感情を表現するツールとして用いられてきました。
この花言葉、いったいいつどこで誕生したものなのでしょうか。
この記事では、花言葉の歴史と、それが広まっていった文化的背景、そして現代における楽しみ方について解説していきます。
花言葉の起源
花に想いを託す風習は古くから世界各地に存在しましたが、現在、私たちが知る花言葉の直接的な起源は、17世紀ごろのトルコ(当時はオスマン帝国)の首都イスタンブールで行われていた「セラム(Selam)」という風習にあるとされています。
セラムでは、花や物に特定の意味を持たせ、それらを組み合わせることでメッセージを伝えていました。これは、文字を直接やり取りすることがはばかられた時代における、洗練された非言語的コミュニケーション手段でした。
このトルコの風習がヨーロッパに伝わったのですが、セラムそのものというより、その中の花に意味を持たせるという要素だけが抽出され「花言葉」として広まっていきました。
特に大きなきっかけとなったのが、1818年出版(1819年説もあり)のシャルロット・ド・ラトゥール(Charlotte de Latour)『Le Langage des Fleurs』(花言葉)という本です。花言葉を体系的にまとめたこの本はベストセラーとなり、その後、各国語に翻訳され、ヨーロッパ、そしてアメリカへと花言葉文化を伝える役割を果たしました。
ヴィクトリア朝時代のイギリスでは、花言葉が特に流行し、愛情など特定の感情を密かに伝える手段として盛んに用いられたとされています。
日本における花言葉の広がり
日本に花言葉が本格的に導入されたのは、明治時代のことです。西洋文化が積極的に取り入れられるなかで、花言葉も紹介されました。
当初は西洋の花々に付けられた花言葉がそのまま用いられましたが、時代が進むにつれて、日本の自生種や園芸種にも独自の花言葉が付けられるようになっていきました。
文献でいうと、1909年(明治42年)に田寺寛二が『花ことば』という書籍を出版しています。
花言葉に根拠はある?
花言葉には、公的な認定機関や公式な定義は存在しません。そのため、同じ花でも国や地域、時代、あるいは解釈する人によって、異なる意味を持つことが珍しくありません。
例えば、ある本では「友情」と紹介されている花が、別の文献では「嫉妬」やまったく異なる意味で記されていることもあります。これは、花言葉が時代や文化のさまざまな影響のもとに生まれ、個人の感性によって解釈されながら広がってきた文化だからです。また、新しい品種に開発者が独自の花言葉を与えるケースもあります。
こうした背景からもわかるように、花言葉には意味を保証する絶対的な「根拠」や「ルール」は存在しません。ですから、「この花言葉が正しい」「あの花言葉は間違っている」と深刻に考える必要はなく、その多様性や変化を楽しむくらいの気持ちで接するのがいいと思います。
花言葉は誰のため?
花言葉は、受け取る側がその意味を厳密に解釈することを期待するよりも、むしろ贈る側が自分の気持ちやメッセージを花に託し、密やかに込めるためのものという側面が強いといえます。
大切な人に花を贈る際、言葉では伝えきれない想いを花言葉に託してみる──それは、とてもロマンチックなコミュニケーションの一つです。
もちろん、相手が花言葉を知らなくても、その花の美しさや香り、そして贈ってくれたあなたの気持ちはきっと伝わるはずです。
まとめ
花言葉は、私たちの生活やコミュニケーションを豊かにしてくれるすてきな文化です。
記事でも触れたように、その意味に明確な根拠や裏付けがあるわけではないので、深刻に捉えすぎる必要はありません。
花言葉の由来や歴史を知り、意味の多様性を理解した上で、ぜひ自由に楽しんでみてください。